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第4回勉強会 2025.7.25

🌿 SGきちこがLIFE 第4回勉強会ご報告


テーマ:「FPの相続問題と資産承継における役割

 講師:岩波 均さん


第4回目勉強会は、かなり内容の濃いレベルの高い講義になりました。

以下要約をまとめましたので、是非お目通しください。


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本講義は、高齢化社会の進展に伴い複雑化する相続問題と、ファイナンシャルプランナー(FP)が果たすべき多角的な役割に焦点を当てています。特に、相続紛争の増加、資産管理の重要性、そして円滑な資産承継のためのFPの専門性とネットワーク構築の必要性が強調されました。


相続マーケットの現状と紛争の実態

日本の死亡者数と認知症患者数の増加は、相続関連マーケットの拡大を牽引しており、FPがシニア世代の資産管理や相続対策に関わる機会が増加しています。戦後の民法改正による均分相続の導入と個人の権利意識の高まりが、「争族」と呼ばれる相続紛争の一般化を招いています。この紛争は富裕層に限らず、遺産総額が少ないケースでも頻繁に発生しており、遺産総額1,000万円以下の案件が全体の約3分の1を占める実態が示されました。相続税は原則として一括現金納付であり、不動産など異なる財産間の差額調整にも現金が不可欠であるため、相続財産における現金の比率が極めて重要です。不動産や非上場株式など、財産にはそれぞれ固有の「癖」(特性)があり、分割が困難であったり、将来的なトラブルの種となる可能性があるため、その特性を理解した上で計画を立てる必要があります。


FPの相続ビジネスにおける二つの側面

FPの相続ビジネスには、「相続手続き支援サービス」と「相続・資産承継コンサルティング」の二つの側面があります。

1.    相続手続き支援サービス:税理士や司法書士などの専門家と協力し、煩雑な手続きを支援します。これはFPが相続の現場経験を積む機会となります。

2.    相続・資産承継コンサルティング:クライアントとの信頼関係を構築し、長期的な伴走を通じて円滑な資産承継を実現します。これには、価値観を共有できる専門家チームによる対応が不可欠です。


資産承継対策の全体像と主要な対策

相続対策は、単なる税金対策に留まらず、「分割対策」「手続き対策」「税金対策」の三つの側面をバランス良く計画・実行することがFPに求められます。

·       分割対策:遺言書(自筆証書、公正証書)、生命保険、生前贈与などを活用し、どの財産を誰に承継させるかを明確にします。遺言書は作成者の死亡時に法的効力を持ち、法定相続に優先しますが、中途半端な内容は混乱の元となる可能性があります。

·       手続き対策:遺言執行者の設定が重要です。遺言執行者は遺言内容の実現、相続財産の管理、相続人への情報提供などを行い、相続人の負担を軽減します。複雑なケースでは弁護士が担うこともあります。遺言書がない場合、相続人が多数いる場合や認知症の相続人がいる場合、成年後見制度とは別に「特別代理人」の選任が必要となり、手続きが複雑化します。

·       税金対策:長期にわたる計画的な生前贈与が基本です。死亡保険金の非課税枠や小規模宅地等の特例も活用しますが、最近の裁判事例では、制度の盲点を突くような過度な節税対策は否認される傾向にあるため、FPはクライアントにそのリスクを正確に説明する必要があります。生命保険の「みなし相続財産」やタワーマンションの評価額に関する議論は、「悪意」の有無や「合理性」が法的に問われる可能性を示唆しています。


相続における特別な状況への備えとFPの役割

·       認知症・介護への備え:高齢化に伴い、認知症や介護状態になるリスクが高まる中で、財産管理や法的手続きに支障をきたす可能性があります。成年後見制度や家族信託などの早期対策が不可欠であり、金融機関のサービス活用も有効です。

·       死後事務:死亡後の様々な手続き(死亡届の提出、葬儀・納骨の手配、遺品整理、デジタル遺品を含む契約の解約など)を円滑に進めるため、生前に信頼できる人や専門家に委任する「死後事務委任契約」の重要性が増しています。

·       シニア世代の資産管理:年金生活に入ると、収入からストック資産の活用へと移行するため、資産の適切な管理とリスク管理が重要となります。FPは、「使うお金」「増やすお金」「残す・備えるお金」というお金の色分けと、計画的な資産の切り崩しをアドバイスし、顧客のライフステージ(活動期、準備期、非支援期)に応じたリスク管理と資産承継計画をサポートします。

·       信託銀行の役割:信託銀行は、家族信託(民事信託)、特定贈与信託(障害を持つ方の生活・療養費支援)、教育資金贈与信託、成年後見制度信託など、多岐にわたるサービスを提供しており、FPとの親和性が高いとされます。特に特定贈与信託や教育資金贈与は、単なる税金対策ではなく、社会的な目的を持つ制度であることをFPは正確に説明すべきです。

·       「寄与分」と紛争の実態:介護などによる「寄与分」は、感情的な貢献が大きくても、法律上は具体的な経済的損失がないと認められにくい傾向があります。相続争いは、遺言があっても最終的には法定相続分に収斂することが多く、当事者意識の低い親族(例:兄弟の配偶者)が紛争を複雑化させることもあります。


FPの専門性と倫理

相続は、退職金や宝くじ、事業成功、犯罪以外で、人生で大きな金銭が動く数少ない機会であり、その解決には机上の知識だけでなく、現場での実務経験と「テクニカル」なスキルが不可欠です。FPは相続に関する相談を受ける機会が増えていますが、その複雑性から安易に引き受けるべきではなく、高度な専門知識と倫理観を持ち、必要に応じて弁護士、税理士、司法書士などの他の専門家と連携することが強く求められます。信頼できる専門家ネットワークの構築は、複雑な相続問題に対応する上で非常に重要です。FPは、顧客のライフステージや個別の状況を深く理解し、リスクとメリット、コストを明確に説明し、適切なアドバイスを提供することが求められます。

 
 
 

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